義父への報告−″肺がんステージ4″を伝えた夜

亡き夫のこと

病院を出た直後の、重たい沈黙

診察中から、主人のスマホが何度も震えていた。
発信者は、主人の父。
せっかちな義父には「もしかしたら病気かもしれない」とだけ伝えていたので、結果が気になって仕方がなかったのでしょう。 コールが鳴っても取らない主人。
義父は何度もかけてきた。

もともと、優しい言葉をかける人ではない。
義母(奥さん)や我が子にはいつも上からものを言う。
それでもこんな時、どんな声を出すのだろう?
私は、そんな興味すらありつつ想像ができた。
嫁入りして20年近くなるからだいたいわかっちゃう。


「肺がん、ステージ4です」

病院を出た車内。主人の手が震えるのを見ながら、私が義父に電話をかけた。
そして、主人が自分の口で言った。

「肺がんだって。ステージ4らしい」

その瞬間、受話器の向こうで、怒鳴るような声が響いた。
「は? 間違いはないのか? 撮った画像をもらって他の病院に行くぞ!」

息子の気持ちなどおかまいなしに、いつも通り吠える義父。
沈黙の車内に、その声だけがこだました。

こういう時の声掛けは難しいのはわかってる。
でも。がんと言われた本人の前で吠えるのはどうなの?
ここで私からいえる雰囲気もなく沈黙が続いた。

主人の目にうっすら涙が溜まっていた・・・。
滅多に涙を出さない主人、悔し涙?父親に理不尽な言われ方をして困惑した涙? 

息苦しい車内で流れるラジオが唯一の緩衝材だった。


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